石母田正と戦後マルクス主義史学

アジア的生産様式論争を中心に

[述]原秀三郎
[編]磯前順一磯前礼子

石母田史学とは何であったのか。
マルクスによって記述された「アジア的生産様式」をめぐる論争は、古代から近現代にいたる日本「特有」の性質の究明を目的としておこなわれてきた。この論争を緒として歴史家石母田正と京大日本史学のかかわりを中心に戦後歴史学の軌跡をたどり、時代区分なき政治史、形骸化した実証史学といった現在の歴史学への反省のうえに、マルクス主義歴史学の可能性を問いなおす。

定価=本体 4,200円+税
2019年5月10日/A5判並製/272頁/ISBN978-4-88303-477-2


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[目次]

自序 原秀三郎

第1部 石母田正と戦後マルクス主義史学――アジア的生産様式論争を中心に [原秀三郎+磯前順一]
   はじめに
   第1章 生い立ちから静岡大学史学専攻課程設立まで
      伊豆下田時代
      生まれ故郷、稲梓村
      静岡大学入学と民科での活動
      内藤晃先生との出会い
      石母田正『歴史と民族の発見』
      静岡大学文理学部史学専攻課程の設立

  第2章 京都大学大学院時代
      安良城理論と芝原拓自の登場
      安丸良夫との交流
      河音能平と早川二郎、そして渡部義通
      西田直二郎の文化史学
      清水三男の流れ
   第3章 『資本制生産に先行する諸形態』と京大国史学
      『諸形態』の日本語訳
      時代区分論の必要性
      経済史による影響
      大山喬平の構成的支配論
   第4章 『諸形態』と石母田正の『日本の古代国家』
      芝原拓自の『諸形態』理解
      原秀三郎のアジア的生産様式論批判報告
      『諸形態』解釈の分岐点
      石母田『日本の古代国家』との決別
      国家史と国制史の違い
      寺奴の論理
      石母田理論の陥穽
   第5章 石母田史学とは何か
      石母田「英雄時代論」
      ヒューマニスト石母田正
      「歴史評論家」としての石母田正

第2部 内在化する「アジア」という眼差し――アジア的生産様式論争と石母田正 [磯前順一]
   1.  方法論的アプローチ――他者の眼差しと主体化過程
   2.  知識人と大衆という問題設定――福本イズムから転向問題へ
   3.  停滞論から特殊性論へ――『日本歴史教程』から『中世的世界の形成』へ
   4. 石母田正と第三次歴史教程グループ――三木清の遺産
   5. 石母田正のアジア的古代論――世界史の基本法則と歴史の余白
   6.  挫折と経験 ―― 安良城盛昭と石母田正
   7.  東アジア論への展開 ―― 石母田正『日本の古代国家』

跋にかえて 学問の死の後で ――1981 年の原先生と私 [磯前順一]


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