現代アートの危機

ユートピア、民主主義、そして喜劇

[著者]イヴ・ミショー
[訳者]島本浣中西園子

逆説のようだが、芸術のための芸術とは何よりも大衆のための芸術だ
古い信仰が終わり、特権的地位を失った芸術はいま、多様性のなかに霧散している。こうしておとずれた現代アートの危機によって衰退するのは、美術界といった限られた領域にとどまらないことをミショーは鋭く指摘する。現代アートを美術的問題ではなく文化・社会的問題として提起し、20世紀末にフランスで大論争を巻き起こした本書の21世紀世紀最新版。

[書評・紹介]
『月刊美術』2019年4月号「ART BOOKS 新刊案内」
『月刊アートコレクターズ』2019年4月号「BOOK GUIDE」
「図書新聞」2019年6月1 日、評者:星野太氏
「図書新聞」2019年6月29日、評者:谷川渥氏

定価=本体 3,500円+税
2019年1月31日
A5判上製/280頁/ISBN978-4-88303-471-0


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[目次]

「カドリージュ」叢書への前書き  7

序文  25

第T章 危機論争の経緯と概要  31
   T 経緯  31
   U 議論とそのスタイル  38
   V 拒絶、応答、裂け目  42
      1 時代の憎悪とノスタルジー  48
      2 何でもありの支配  48
      3 民主主義の侵略  49
      4 制度? 制度だって?  50

第U章 危機の文脈  55
   T 市場の危機と金銭免除の喪失  55
   U エリート官僚、共同組合主義と模倣主義  58
   V 大衆と芸術  66
   W 文化財の産業的生産  72
   X 知覚の変容、美学の変容  76

第V章 比較と対比:歴史の正しい使い方について  83
   T 思想における偶像破壊、行為における偶像破壊  83
   U 秩序への回帰?  87
   V 退廃芸術と怪物的なもの  92
   W 反革命の芸術  101
   X 一九六〇年代と一九七〇年代のモダニズムについての新たな論争  110
   Y ポルノグラフィー、政治的正しさと共同体の介入  122

第W章 何の危機か?  127
   T 危機とは何か?  127
   U 市場:不安の射程  130
   V 国際化とマゾヒズム  131
   W 文化国家の現状  133
   X 批評家の健康状態  134
   Y 作家の撤退  137
   Z 創造のダイナミズム  140
   [ 大衆の不在  143
   \ 信頼の喪失  145

第X章 救助の失敗:美的価値の擁護と行政による意味の生産  149
   T 拒絶、基準の対立、評価軸の移動  151
   U 遅ればせのモダニズム  155
   V 解釈学的戦略  159
   W メタ理論への訴求  160
      1 遅ればせのモダニズムからモダニスト的伝統主義へ:ド・デューヴ  161
      2 不在の解釈学:ディディ=ユベルマン  165
      3 象徴、象徴、象徴:ロクリッツ  170
      4 作品のノスタルジー:ミエ  174
   X 多元主義の美学  177
   Y 作家の困惑  181
   Z 行政による意義の産出  183
      1 現代アート:文化遺産  185
      2 多元主義を援助する国家  186
      3 ロマン主義的魔術師と創作活動の公共サービス  187

第Y章 芸術のユートピアの終焉  191
   T 芸術概念の危機  192
   U ユートピアの終焉  195
      1 民主主義的市民権のユートピア  195
      2 労働のユートピア  196
   V 市民的ユートピアの活力:ラディカルデモクラシー  198
   W 労働のユートピアの危機  200
   X 芸術のユートピア  203
   Y 芸術のユートピアの終焉  213
   Z いくつかの防衛戦略  215
      1 アヴァンギャルドの活動  215
      2 聖なる歴史  217
      3 美学の政治化  218
      4 象牙の塔  218
   [ 完全に死に絶えた  219

結論  223

訳者あとがき  237
注  1
参考文献  17
人物解説  24


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