中国の少数民族教育政策とその実態
新疆ウイグル自治区における双語教育

[著者]アナトラ・グリジャナティ

改革開放後、新疆ウイグル自治区にも大量の漢族が移住し、経済的にも漢語の需要が高まり、ウイルグル社会は大きな変容を迫られている。そうしたなか、双語教育(漢語と民族語)は、科目としての漢語教育から教授用言語の漢語化へと進んでいるが、さまざまな問題が起きている。その実態を、双語教育の歴史的展開をあとづけつつ、学校教育、家庭、社会生活などから明らかにし、多言語・多文化共生社会をめざす、民族教育のあり方を展望する。

定価=本体 3,000円+税
2015年12月28日
A5判上製/232頁/ISBN978-4-88303-396-6


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[目次]

序章 現代中国における少数民族教育の課題 1
   第1節 研究の目的 2
   第2節 先行研究と問題の所在 4
      2.1 バイリンガル教育研究と中国の「双語教育」 4
      2.2 中国における双語教育研究の流れ 6
      2.3 日本における中国双語教育研究 10
      2.4 双語教育と「和諧社会」論 12
   第3節 調査の概要と本書の構成 16
      3.1 調査地の選定と概要 16
           3.1.1 新疆の概要 18
           3.1.2 ウルムチ市の民族・言語環境 21
           3.1.3 カシュガル市の民族・言語環境 23
      3.2 調査の概要 25
      3.3 本書の構成 25

第1章 中国の民族政策と双語教育 31
   第1節 民族教育の定義とその役割 32
      1.1 民族教育の定義 32
      1.2 民族教育の役割 34
      1.3 教育機会均等と民族教育 36
   第2節 双語現象と双語教育 38
      2.1 双語現象 38
      2.2 双語教育と双語教学 40
      2.3 双語教育の類型 43
      2.4 双語教育の研究対象 45
   第3節 民族教育の法的位置づけと現実 47
      3.1 制度上の法的保障 47
      3.2 現実にみる法的保障 49
      まとめ 51

第2章 新疆における双語教育政策の変遷 53
   第1節 新疆における漢語教育の導入 54
      1.1 建国以前の漢語教育 54
      1.2 建国から民族政策の回復までの漢語教育 56
   第2節 改革開放後の双語教育 58
      2.1 「民漢兼通」を目標とした「双語教育」 58
      2.2 「双語教学」から「双語教育」へ 60
      2.3 「HSK」の導入 61
   第3節 西部大開発以降の双語教育 63
      3.1 「内地新疆高中班」の設置 64
      3.2 「民漢合校」の推進 66
      3.3 漢語中心の双語教育に関する強化政策 68
      まとめ 70

第3章 新疆社会における双語使用の歴史と地域性 73
   第1節 多言語社会としての新疆 74
      1.1 建国までの言語使用状況 74
      1.2 建国後の言語使用状況 76
   第2節 漢族集中地域の言語使用事例―ウルムチ市 79
      2.1 ウイグル族の商業区 79
      2.2 漢族の商業区 82
   第3節 ウイグル族集中地域の言語使用事例―カシュガル市 86
      3.1 地方都市バザール 87
      3.2 地方農村バザール 90
      まとめ 94

第4章 双語教育における教授用言語の変化 95
   第1節 漢語の教授用言語化の実験―中等教育 96
      1.1 「双語実験班」の導入 97
      1.2 「双語実験班」の成果とその拡大 99
      1.3 「双語実験班」の実態 101
   第2節 漢語一元化へ向けて―高等教育 105
      2.1 高等教育機関の概況 106
      2.2 民族教育の質を高める主要対策 108
           2.2.1 「113教改工程」 109
           2.2.2 少数民族学生の漢族クラスへの移動 110
           2.2.3 教員研修 111
           2.2.4 教員研修の目標と実施 112
      2.3 現状と課題 114
           2.3.1 学生への聞き取り調査から見る教育の実態 115
           2.3.2 教員への聞き取り調査から見る教育の実態 117
      まとめ 119

第5章 双語教育における母語の重要性 121
   第1節 双語教育における母語の位置づけ 122
      1.1 母語の役割 122
      1.2 年齢と母語形成 125
   第2節 母語形成期後期における双語教育とその実態―初等教育 127
      2.1 調査校の選定と概要 127
      2.2 双語教育の実態 130
           2.2.1 「語文」の授業 130
           2.2.2 「算数」の授業 133
           2.2.3 考察 135
   第3節 母語形成期前期における双語教育とその実態―幼児教育 137
      3.1 新疆における幼児教育 138
      3.2 幼児教育に関する予算配分 139
      3.3 教育内容における双語教育的要素 141
      3.4 幼児双語教育の実態 143
          3.4.1 調査の概要 143
          3.4.2 A・B幼児園の選定理由 145
          3.4.3 A幼児園の双語教育現状 146
          3.4.4 B幼児園の双語教育現状 151
          3.4.5 幼児園の選択 153
      まとめ 155

第6章 家庭教育における双語受容 157
   第1節 生活場面における子どもの双語受容 158
      1.1 地域社会における双語使用の実態 159
      1.2 家庭における双語使用の実態 161
   第2節 漢語の積極的受容―「民考漢」を事例に 164
      2.1 母語教育とアイデンティティ形成 165
      2.2 「民考漢」の揺らぐアイデンティティ 168
      2.3 学校不適応 171
      まとめ 174

第7章 双語教育における道徳教育の実施 175
   第1節 中国における道徳教育の特徴 176
      1.1 価値観の違いと道徳教育 176
      1.2 ウイグル社会における道徳教育とその社会的役割 179
   第2節 ウイグル社会における道徳教育の現状 182
      2.1 双語教育の発展趨勢 182
      2.2 双語教育における道徳教育の現状 184
      まとめ 188

終章 民族教育の内実と和諧社会論 191
   第1節 本書の概要 192
   第2節 現代中国における民族教育の内実 196
      2.1 民族平等と民族学校 196
      2.2 教育機会均等と民族教育 198
   第3節 「和諧社会」論と民族教育 199
      結語―今後の展望と課題 201

あとがき 203
参考文献 208


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