ヴィデオ

再帰的メディアの美学

[著者]イヴォンヌ・シュピールマン
[監訳者]海老根剛
[訳者]柳橋大輔遠藤浩介

ヴィデオは過渡的なメディアではない。電子信号の変換と即時再生の再帰的構造に立脚する真に視聴覚的なメディアとして、ヴィデオは映画ともコンピューターグラフィックスとも異なる独自の映像美学を実現する。映画映像やコンピューター映像とは異なる構造とダイナミズムを持つヴィデオ映像の宇宙の解明。

[リンク]
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[書評]
《読売新聞》2012年2月5日、評者:岡田温司氏

定価=本体 6,000円+税
2011年11月25日A5判並製/592頁/ISBN978-4-88303-299-0


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[目次]

      まえがきにかえて 私とヴィデオ(アート)   伊奈新祐   7

序論:視聴覚メディア   13

第一部:テクノロジーそしてメディアとしてのヴィデオ   41
      メディア発展の系譜学的モデル 44  メディアシステムの変動とヴィデオの独自性の美学的分析 49
   メディア論的考察   50
      デジタルとアナログ:既存の理論的アプローチの不十分さ 50  ハイブリッド化の概念 55  
      表象/電子映像/合成映像 60  電子的変換とデジタル的シミュレーション 63  
      表象/電子映像/コンピューター映像 65  ヴィデオとハイブリッド化 68
   視覚化をめぐる議論   72
      画像的転回 72  エイゼンシュテインの試み 75  フルッサーの技術映像論 76  
      図像的転回/シミュレーションとディシミュレーション 80  メディア映像の諸類型 82  
      ヴィデオ映像の批判的ポテンシャル 84  視覚文化/電子文化 85
   技術と機器に関わる諸前提   88
      ヴィデオの技術的構造 88  ヴィデオ映像の諸特性 92  ヴィデオとテレビ 94  電子映像とデジタル映像 97
      映画/ヴィデオ/コンピューター 100  ヴィデオとテレビの成立過程 101  ヴィデオの再帰的諸形式 104
   マトリクス映像   107
      不可視的秩序の可視的構造化 107  マトリクスの概念 108  
      ヴィデオにおけるマトリクス現象:ウッディ・ヴァスルカの習作 110  ベクトル循環のメカニズム 114  
      デジタルなシミュレーション映像 116  デジタル性と映像の隠喩 120  
      ヴィデオとコンピューターの結びつき:コード化とプログラミング 123  
      ハイブリッド化と反復的二重化:ビョークのミュージッククリップ 124

第二部:再帰的メディア   131
      〈映像技術者〉の仕事 136  実験的ヴィデオ実践の三つの方向性 138
   実験段階   140
      ポータパックの登場 140  ヴィデオ誕生期のいくつかの場面 143  複数の同時並行的発展 147
   ゲリラ・テレヴィジョン   152
   アーティスト・ヴィデオ   155
      ホワイトキューブへの抵抗 155  メディアの境界とその越境 156  マルチメディア的展示 157  
      コンセプチュアルなヴィデオ―パフォーマンス 159  女性表象の脱構築 160  公共映像との取り組み 161
      観察・チェックのメディアとしてのヴィデオ 163  空間インスタレーションへの拡張 164  
      中継メディアとしてのヴィデオ 166  ヴィデオ使用のその他の諸方法 166  劇映画へのヴィデオの進出 167
      ヴィデオ、映画、アートシーンの緊張関係 168
   補論:映画、ヴィデオ、コンピューターの関係について   170
      ヴィデオと実験映画の非対称的な相互関係 170  実験ヴィデオと実験映画の並行的発展 171  
      映画からヴィデオへの越境者たち 172  シャーリー・クラーク 173  エド・エムシュウィラー 175  
      ジャド・ヤルカット 177  拡張映画の別の方向性 179  映画とヴィデオへのデジタルテクノロジーの導入 180
      パット・オニール 180  スタン・ヴァンダービーク 182  映画とヴィデオ:同時並行的発展 187  
      シンセサイザーとプロセッサー:定義と概説 188
   実験ヴィデオ   195
      ヴィデオ実践の映像技術的な方向性 195  実験ヴィデオで用いられた機器と装置 196  
      実験ヴィデオのアプローチとテクノロジーの発展の密接な結びつき 201  写真的思考からの離反 202  
      抽象映画と実験ヴィデオの相違点 205  ウッディ・ヴァスルカの Art of Memory 206  ゲイリー・ヒル 209
      ナム・ジュン・パイク 212
   実験ヴィデオの二重のアプローチ 214
   ヴィデオ文化   217
      ヴィデオ実践の三つの方向性 217  キッチン:メディア横断的な実験の場 221  
      メディアの誕生の諸段階 222  ヴィデオ文化的実践の端緒:アコンチとオッペンハイム 223  
      女性の身体表象の再帰的主題化:ローゼンバッハ、ジョナス、エクスポート、ペッツォルト 224  
      テレビ映像への介入:バーンバウム、パイク 224  
      写真的―映画的映像への介入:フォム・ブルッフとオーデンバッハ 226  
      映像レベルと対象レベルの緊張関係:キャンパス 227  
      二次元的摸像と三次元的シミュレーションの対置:中島 227  
      ヴィデオによる映像の再メディア化 228  映像性のダイナミズムの強化と圧縮:ギトンとランゴート 231  
      ダイナミズムの除去:レヴィーネ 231  
      メディア的リアリティの自己反省と閉回路の活用:セラとキースリンク 232  
      物語的リニア性とプロセス的視覚性の緊張関係:カエン 233  
      異所的なコラージュとしてのヴィデオ映像:カラス 233  
      ヴィデオ―スクラッチ:オルティスとアーノルト 234  コンピューターメディアにおけるスクラッチ: Jodi 235
      可視性の限界の探究:ラーチャー 236  ヴィデオ映像の諸性質の意識化:フーヴァー 239  
      マトリクス映像における表面と構造の諸関係:ヒル 239  
      メディア言語の翻訳と電子的語彙の探究:ヴァスルカ夫妻 240  
      メディア的リアリティの多面的考察:ハーシュマン 241  ハイパーメディアへの移行:シーマン 243  
      電子的語彙の探究にほとんど寄与しないヴィデオ使用:ビル・ヴィオラの事例 245  
      マルチメディアへの拡張:アハティラ、アケルマン、ウェアリング 246

第三部:ヴィデオ美学   251
      スケール、ペース、パターン 253  キャパシティ、速度、操作性 255  技術と美学の対話的関係 256  
      プロセス性と変換性 257  視聴覚性、再帰性、複数的な装置的秩序 259  
      ヴィデオの間メディア的な確立 259  ノイズからのヴィデオの誕生 261  
      視聴覚性(変換性)、再帰性(プロセス性)、抽象化(ノイズ) 263
   機器、自己反省、パフォーマンス:ヴィト・アコンチとデニス・オッペンハイム   264
   映像、摸像、メディア映像:ウルリケ・ローゼンバッハ、ジョーン・ジョナス、ヴァリー・エクスポート   281
   ヴィデオ/ TV :ナム・ジュン・パイクとダラ・バーンバウム   297
   ヴィデオ、写真、映画:クラウス・フォム・ブルッフとピーター・キャンパス   310
   構造ヴィデオ:ミヒャエル・ランゴート、レス・レヴィーネ、ジャン=フランソワ・ギトン、リチャード・セラ、
   ディーター・キースリンク   325
   ヴィデオの音楽化:ロベール・カエン   341
   マルチレイヤー化と圧縮:ピーター・カラス   349
   ヴィデオ・スクラッチ:マーティン・アーノルトとラファエル・モンターニェス・オルティス   357
   ヴィデオ・ヴォイド:デイヴィッド・ラーチャー   365
   ミクロ次元/マクロ次元:ナン・フーヴァー   373
   映像、テクスト、声、書字:ゲイリー・ヒル   380
   ヴィデオとコンピューター:スタイナ・ヴァスルカとウッディ・ヴァスルカ   391
   ヴィデオとヴァーチュアル環境:リン・ハーシュマン   428
   ヴィデオ、詩学、ハイパーメディア:ビル・シーマン   438
   ヴィデオ・インスタレーション:エイヤ=リーサ・アハティラ、シャンタル・アケルマン、ジリアン・ウェアリング   447

展望:複雑性とインタラクティヴ性   457

      訳者あとがき   465
      文献一覧   471
      図版一覧   480
      人名索引   486


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