自然と人

近代中国における二つの思想の系譜の探究

[著]王中江(Wang ZhongJiang)
[監訳]馬場公彦(Baba Kimihiko)
[訳]葛奇蹊(Ge QiQi)佐藤由隆(Sato Yoshitaka)

中国哲学史・中日近現代哲学研究の第一人者である著者が、清末・民初以降の厳復、章炳麟、胡適、馮友蘭、金岳霖、陳独秀、張岱年、梁漱溟など著名な哲学者・思想家十数名の思想と言説を取り上げ、近代中国において西洋の「自然」と「人」の概念を、伝統的思想といかに結合し、変容させていったのかを取り扱う力作。6編15章で近現代中国の哲学史を書き換える。

定価=本体 8,500円+税
2023年5月15日A5判並製/788頁/ISBN978-4-88303-561-8


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[目次]

日本の読者に寄せて  iii

序言  1

第1篇 自然と人  13
   第1章 近代中国における「自然」という概念の誕生  14
     はじめに  14
     1  「nature」に対する清末辞書の解釈――「本性」「天地」「天然」から「自然」へ  16
     2  「物」「理」「質力」から「自然」へ――清末における格致学・科学と「 nature 」の実体化の過程  24
     3  清末における天・天然・自然と「 nature 」の融合  42
     4  自然――人文・生命・精神  60
     おわりに  78
     注  80
   第2章 近代中国における「人」という概念の構築  95
     はじめに  95
     1  人の起源――進化・競争・相互扶助  96
     2  種族の意味から見る「人」――別種・淑種・通種  109
     3  「人」の理智化  121
     4  人――快楽・幸福・道徳  130
     5  新人と新人格  142
     おわりに  150
     注  152

第2篇 自然・超自然と人  163
   第3章 厳復の科学的・進化的視野と自然化された「天人観」  164
     はじめに  164
     1  「天」と「二つの世界」  165
     2  自然的・必然的な「天」と「天演」  174
     3  「天演」と人類・人道・社会  185
     おわりに  196
     注  197
   第4章 章炳麟の近代的な脱呪術化と価値的合理性――「自然」「人性」から人の道徳的自立へ  204
     はじめに  204
     1  自然による超自然の脱構築  206
     2  「心識」による自然と超自然の脱構築  214
     3  人性的な自然から人の「非自然」へ  223
     4  価値的合理性――人の道徳的自立  233
     おわりに  241
     注  244
   第5章 自然・人事・倫理――東西文脈における胡適の自然主義的な立場  254
     はじめに  254
     1  宇宙・実在と自然  256
     2  科学から見る自然  267
     3  技術から見る自然  277
     4  人の自然から倫理へ  292
     おわりに  301
     注  303

第3篇 自然・実在と人  311
   第6章 馮友蘭の価値的合理性及びその構築方法――「天地境界」と「天人之際」  312
     はじめに  312
     1  「価値的合理性」の構築及びその究極的な意義  314
     2  「天人之際」による超越性の獲得  324
     3  文化的普遍性の思惟方法と哲学理性による価値的合理性の構築  330
     おわりに  336
     注  337
   第7章 人類はいかに「自然」を大切にすべきか――金岳霖の哲学における「天人之際」と「天人合一」  341
     はじめに  341
     1  金岳霖の思想遍歴に見られる「天人合一」  342
     2  「道演」と「実在」の「二分」――形而上学から見る人と自然の分化  347
     3  人類文明の幸と不幸――知識・目的と誤解  350
     4  「尽性論」から見る「人と自然の統一」  357
     5  人生の視野から「聖人人生観」と「天人合一」へ  365
     おわりに  370
     注  372
   第8章 「天人合一」と「精神境界」――現代哲学者の心情と荘子の知恵  376
     はじめに  376
     1  金岳霖の「道一」と「天人合一」  376
     2  馮友蘭の「超形脱相」と「天地境界」  396
     3  方東美の「生命情調」と「超脱精神」  407
     おわりに  415
     注  417

第4篇 自然・物質と人  425
   第9章 多層的な側面を持つ「人」――陳独秀による描写  426
     はじめに  426
     1  人――現実・実在と進化  427
     2  人の本性・倫理と宗教  433
     3  政治的な人権と経済的な人権  446
     4  人と知識・科学  452
     おわりに  458
     注  460
   第10章 実在・客観と価値――張申府の「唯実世界観」  465
     はじめに  465
     1  「実在的世界」――信念・由来と融合  467
     2  多元的方法と「唯実」  478
     3  人生と倫理における「唯実」  490
     おわりに  502
     注  506
   第11章 自然秩序と人間共同体という生活理想――張岱年の「天人会通」  513
     はじめに  513
     1  「自然と人」をめぐる哲学的経歴と関心  514
     2  歴程・創生と秩序――宇宙観と自然観  519
     3  人類観と理想的人間生活の構築  525
     おわりに  531
     注  534

第5篇 自然・文明と人  539
   第12章 辜鴻銘の儒家道徳理想主義から見る救世論・文明観と信仰  540
     はじめに  540
     1  辜鴻銘の道徳救世論と文明観  541
     2  道徳的な信仰世界――「良民宗教論」と「孔教観」  562
     おわりに  577
     注  579
   第13章 殷海光の究極的関心・文明的省察と「人」という理念  584
     はじめに  584
     1  苦しい精神の旅、「人類への関心」と「人」という理念  585
     2  現代文明への反省と「現代人」への批判  594
     3  建設的な「人」という理念  604
     おわりに  618
     注  619

第6篇 自然・生命と精神  625
   第14章 生命の創造と霊性化――梁漱溟の倫理的生命主義  626
     はじめに  626
     1  進化と創造――宇宙の生命から人の生命へ  627
     2  霊性と倫理化――人心の進化と創造  635
     おわりに  647
     注  649
   第15章 「外を拒み、内を守る」――馬一浮の反功利主義と自己認識の学  652
     はじめに  652
     1  「外在性」の排斥――功利主義と実用理性に対する批判  653
     2  「外」から「内」へ――心性と自己の体認  667
     おわりに  679
     注  680

結論  686
     注  694

付録  695
  個人・理智とよい人生――胡適の「科学人生観」  696
     1  個人主義の論理的発展  697
     2  人生の科学化と理性化  702
     3  新しい人格像  706
     4  人生の目的とその実現  710
     5  道徳と善の相対化  713
   「人類関懐」と「聖人人生観」――一つの具体例から見る金岳霖の『論道』と『道・自然与人』の相違  718
   張岱年の「天人新学」――自然・人と価値  726
     1  知恵の激情と一貫した道  726
     2  非本体的な「本」と直線的過程  729
     3  人と自然の二重関係  731
     4  「合群」の「社群哲学」  733
     注  736

参考文献  740
あとがき  744
訳者あとがき  748
著訳者紹介  754
索引