ポニョCODE

『崖の上のポニョ』に隠された宮崎駿の暗号

[著]渡辺真也

本書は、映画『崖の上のポニョ』に秘められた宮崎監督と夏目漱石、三島由紀夫、寺山修司、司馬遼太郎、手塚治虫、ワーグナー、ポー、ジョイス、日本神話、ミケランジェロ、ダ・ヴィンチ、ミレーなど、数々の人々や作品との影響関係を解読していきます。そして、「生まれてきてよかった」という映画のメッセージにもう一度耳をすませます。
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巨大な磁場を抱えて生きる人は、やってきたものを変換し、解き放ちながら生きていく運命を背負う。人が不思議な通路を介して呼応し合うことは魂における謎だ。世代を超えて何かを継承することは、生きる意味に含まれているだろうか。神話と現代、直観と理性を溶け合わせ、困難な仕事をやり抜いた本書は、時の記憶に永久に刻まれるはずだ。稲葉俊郎(医師・医学博士)

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定価=本体 3,800円+税
2021年11月25日A5判並製/432頁/ISBN978-4-88303-540-3


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[目次]

はじめに  7
   監督企画意図  9 /『崖の上のポニョ』あらすじ  10

地獄篇 ─出発点─

1  鞆の浦から考える  14
「老い」というテーマにどう向き合うのか?  14 /鞆の浦への社員旅行  15 /宮崎監督は何故崖の上の一軒家での滞在にこだわったのか?  16 /赤い三角屋根を持つリサと宗介の家  18 /漱石の小説における崖のメタファー  18 /父と母が生まれる前の人間の本性へ  20 /『崖の下の宗介』から『崖の上のポニョ』へ  23

2  イメージボードから考える  26
無意識から生まれてくるもの  26 /赤毛のポニョ  31 /『ファインディング・ニモ』の影響  32 /宮崎監督とラセター監督の出会いとしての『 NEMO /ニモ』  33 /潜水艦ノーチラス号に乗船していた唯一のアジア人 35 /映画『ピノキオ』に登場する金魚のクレオ  37 /海底のピノキオに見られる手塚 → キューブリック → スピルバーグ → 宮崎のリレー  38 /フジモトにちらつく手塚治虫の影  42 /『海底三万マイル』を作った奥山玲子と東映動画の生き残り  45 /ポニョを閉じ込める「永遠に引き裂かれた存在」としてのフジモト  46 /死んだ母との再会としての『銀河鉄道の夜』  51 /妹トシの死から生まれた『永訣の朝』と『銀河鉄道の夜』 58 /宮沢賢治の作品に現れる暗号的要素  64 /トキとは何者か?  67 /『ひまわりの家の輪舞曲』に込められた「おむかえ」と輪廻転生  70 /西の魔女から東の魔女へ  74

3  海から陸を考える  77
精子としてのポニョ  77 /わたしが魚だった頃の記憶  79 /生命の水の貯蔵庫に書かれた「 PANGEA 1907 」  80 /女性原理としての海と男性原理としての陸  83 /日本列島の最古層としての母なる海洋文明  87 /北欧神話の死神ブリュンヒルデとしてのポニョ  89 /インド版ワルキューレとしてのアプサラス  90 /オノマトペとしてのポニョ  91 /観音さまとしてのグランマンマーレ  92 /グランマンマーレの名前が意味するもの  95 /『草枕』に登場するオフィーリア  97 /カンドンブレに登場する海の女神イエマンジャ  100 /ライフラインとしての給水塔  101 /Y字アンテナの持つ意味  104 /何故、東と西が入れ替わるのか?  106 /映画『E.T.』に応答するリサと宗介の『アダムの創造』  107 /ダンテ『神曲』からの影響  110 /レオナルド・ダ・ヴィンチの『岩窟の聖母』  111 /ブリュンヒルデとポニョとしての『バベルの塔』  114 /中国の洪水伝説に登場する「魚婦」  115 /死して蘇る中国の洪水神  117 /ポニョは何故ハムが好きなのか?  117

4  ワーグナーの『ワルキューレ』から考える  121
『ニーベルングの指環』第二部『ワルキューレ』が与えた影響  121 /生と死の重なり合い  125 /多細胞生物から誕生した性と死の概念  128 /第三部『ジークフリート』と第四部『神々の黄昏』  130 /『平家物語』からの影響  132 /きのこ雲型の珊瑚塔と『トトロ』のドンドコ踊り  134 /堀田善衛からの影響:鴨長明と藤原定家  135

煉獄篇 ─折り返し点─

5  日本美術史から考える  140
伊藤若冲の『動植綵絵』  140 /最後の狩野派絵師、狩野芳崖の『悲母観音』  142 /フェノロサと岡倉天心  143 /『悲母観音』のモデルとしての九鬼波津子  145 /『モナ・リザ』としての『悲母観音』  146 /仏教の三十三観音をキリスト教の三位一体と融合する  150 /熊谷守一の「赤い輪郭線」  150 /海の魚類と陸の人類を繋げた赤瀬川原平の『模型千円札』  153 /津波のように押し寄せたアメリカ文化  155 /パール・バックの小説『つなみ』における門、そして生と死  156 /道元が考える生死と崖について  159 /脳みそに釣り糸を垂らす  161

6  漱石の暗号から考える  162
夏目漱石『夢十夜』から考える「宗介」という名前のアナグラム  162 /カタストロフと愛としての一八〇八年・一九〇八年・二〇〇八年  168 /百年と千年の暗号:『千と千尋の神隠し』  170 /夏目漱石と『トリストラム・シャンディ』からの影響  171

7  ベルイマン監督の映画『仮面/ペルソナ』から考える  174
イングマール・ベルイマン監督の映画『仮面/ペルソナ』からの影響  174 /宮崎監督とベルイマン監督  174 /宮崎監督とベルイマン監督を繋ぐゴットランド島  176 /『仮面/ペルソナ』要約  180 /『ペルソナ』の換骨奪胎としての『崖の上のポニョ』  186 /『人魚姫』の再解釈としての『ペルソナ』と『崖の上のポニョ』  188 /本来の自分の内面とは異なる外面  190 /「生まれないでくれ」から「生まれてきてよかった」へ  191 /『崖の上のポニョ』に見え隠れする近親相姦モチーフ  195 /母殺しとしてのエレクトラ・コンプレックス  196 /失われた母子関係の代用品  198 /陰陽魚としてのポニョ  200 /ユングが西洋に紹介した『太乙金華宗旨』  201 /反転する「ひまわりの家」と「ひまわり保育園」  204 /アンドレイ・タルコフスキー監督の映画『サクリファイス』からの影響  205 /「ひとり」としての父と子と、「ひとり」としての四人のマリア  209 /応答し合うタルコフスキー監督と黒澤明監督から、宮崎監督へ  212 /五行思想から読み解く、宮崎監督が「火」ではなく「水」を用いる理由  215 /火と水に見られるモーツァルト『魔笛』からの影響  217 /カメラ・オブスクラとしての身体  221 /人を愛することの難しさ:ナルキッソスとエコーとしての宗介とポニョ  223

8  司馬遼太郎の『坂の上の雲』から考える  226
『坂の上の雲』へのオマージュとしての『崖の上のポニョ』  226 /「本日天気晴朗ナレドモ浪高シ」  227 /正岡子規の親友としての秋山真之と夏目漱石  229 /正岡子規の影響下にある野球選手の「耕一」  235 /一万年の農耕文明としての耕一  238

天国篇 ─終着点─

9  三島由紀夫『豊饒の海』から考える  242
『豊饒の海』第一巻『春の雪』  242 /『豊饒の海』第二巻『奔馬』  244 /『豊饒の海』第三巻『暁の寺』(二部構成) 246 /『豊饒の海』第四巻『天人五衰』  249 /『ニーベルングの指環』の換骨奪胎としての『豊饒の海』  250 /グラジオラスから連想される「エメラルドの指輪」としての「緑色のバケツ」  253 /『天人五衰』主人公の透としての宗介:無意識と意識、共時性の観点から  256 /唯識仏教が考えた私たちの意識と無意識  259 /「暴流」の如き輪廻転生としての「ポニョ来る」  261 /同時に成立する過去・現在・未来  263 /フジモトが張っていた蟹避けの結界と「人生の正午」の過ごし方  264 /三島由紀夫を「一生のライバル」と呼んだ手塚治虫の反応  269 /宮崎駿と三島由紀夫の類似性  271 /江戸川乱歩をリレーする三島由紀夫と宮崎駿  273 /乙事主のモデルとしての三島由紀夫  275 /戦後日本を生きる人間にとって「美」とは何か?  278 /三島由紀夫と宮崎監督に共通する音楽の使い方  280 /三島の『奔馬』と宮崎の『千と千尋』を繋げる三輪山と大神神社  283 /神道の一霊四魂説:幸魂・奇魂とは何か?  284 /『千と千尋』ハクのモデルとなったニギハヤヒの謎  288 /三輪山の蛇信仰から読み解く、ハクの名前ニギハヤミコハクヌシの暗号  293 /和魂から考えるハクの「おにぎり」に込められた暗号  296 /三島の「握り飯」に返答する宮崎監督の「おにぎり」  298 /山の上ホテルが意味するもの  301 /国を救うことのできなかった二人のサバイバーズ・ギルドと救世主コンプレックス  302 /三層の垂直構造から成るユーラシアのアーキタイプ  306 /資本主義崩壊の象徴としての崖  311 /椿實『人魚紀聞』からの影響  315 /『人魚紀聞』と『崖の上のポニョ』の共通点  318 /三島由紀夫と椿實  320

10  小川未明と寺山修司から考える  323
ポニョが大きくした蝋燭とは?  323 /小川未明の『赤い蝋燭と人魚』  324 /寺山修司の『人魚姫』  326 /『マルドロールの歌』に登場する人魚と、マン・レイとキキ  329 /オートマティズムと無意識  331 /日本の海の深さとしての東京タワーの「333」  331 /『私は真悟』からの影響としての333  333 /寺山修司による『人魚姫』と『ニーベルングの指環』の出会い  335 /コミュニケーションの手段を失った人がどう愛を表現するのか  337 /寺山修司の『便所のマリア』における赤い蝋燭  338 /蝋燭と船が意味するもの  340 /リサの出す蜂蜜茶とは?  342 /オデュッセウスの冥界下りとしての宗介の船出  343 /自己が他者を見た時に生まれるイメージの重なり合いによる敵対概念の解体  348 /ハム入りラーメンを食べる宗介とポニョ  351 /『人魚』と『ワルキューレ』の絵画  356

11  エドガー・アラン・ポーから考える  359
英語版タイトル“ by the Sea” に込められた暗号  359 /時を超えた向こう側の世界へ:萩尾望都『ポーの一族』からの影響  365 /夏目漱石と司馬遼太郎の英語的解釈としてのエドガー・アラン・ポー  367 /宮崎監督とポーに共通するシンクロニシティ  368

12  「生まれてきてよかった」から考える  372
食べ物を分けてあげるポニョ  372 /ピノコの「アッチョンブリケ」をしてあげるポニョ  380 /空っぽのリサカーが意味するもの  383 /トンネルに象徴される誕生と死  385 /「ポニョには膜が見える」  387 /金魚丸としての空海  388 /宗介の死と再生としての泰州くん誘拐殺人事件  392 /母と「甘え」を巡るリサとグランマンマーレの会話  394 /グランマンマーレによる「スフィンクスの問い」  397 /宗介を抱きしめて、フジモトの子を宿すトキ  398 /ペアの潜在性としての赤と青  400 /『白蛇伝』からの影響  402 /「泡」から生まれた私たち  404 /ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』からの影響  406 /始まりと終わりが繋がる円環構造  408

あとがき  413

主要参考資料一覧  421
図版出典一覧  428


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