プッサンにおける語りと寓意

[著]栗田秀法

観る者を画中に誘う物語画の意味構造
17世紀フランスの偉大な巨匠プッサンの絵画は、硬直したアカデミズムの権化か? 否。厳格な画面構成には造形的レトリックが駆使され、知性ある眼には豊かな語りと込められた寓意が立ち上がる。

[書評・紹介
《図書新聞》2014年8月30日、評者:矢橋透氏

定価=本体 3,800円+税
2014年2月28日A5判上製/ 356頁/ISBN978-4-88303-353-9


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[目次]

   序論 研究動向と本研究の位置づけ  7
      1  プッサン研究の成立と展開  7
      2  美術史的解釈学とプッサン  12
      3  本研究の目的と構成  19

第T部 寓意を呼び込む修辞的な技巧
   第一章 《幼いピュロス王の救出》 ―詩学と倫理学の交錯をめぐって  27
      1  ローマ到着後のプッサン  27
      2  古典的な作風への転換  32
      3  《幼いピュロス王の救出》の概要  37
      4  一六三〇年代前半のプッサンの戦略  40
      5  《幼いピュロス王の救出》における構想の発展  52
      6  女性群像におけるラファエッロとの競合  56
      7  詩学と倫理学の交錯する場  61
   第二章 《エルサレム落城》 ―政治的理念の表象  64
      1  はじめに  64
      2  プッサンの「新しさ」と二点の《サビニの女たちの掠奪》  66
      3  第一作の《エルサレム落城》と図像の伝統  79
      4  ウィーンの《エルサレム落城》とその特質  85
           (1)第一作との相違  85
           (2)プッサン独自のモティーフの由来  86
      5  政治的理念の表象  89
           (1)ティトスの視線  89  
           (2)織り込まれた政治的寓意  94
      6  おわりに  98

第U部 新ストア主義とプッサン
   第三章 《マナの収集》 ―織り込まれた新ストア的範例  103
      1  はじめに  103
      2  図像的伝統における創意  105
           (1)A・ヴェネツィアーノ版刻《マナの収集》とその利用  105             
           (2)「配置」の発見  112   
           (3)前景の主要モティーフの着想源  115
      3  時間表現とペリペテイア  117
           (1)王立絵画彫刻アカデミーの討論  117   
           (2)時間表現  123   
           (3)ペリペテイアの問題  125
      4  記号論的、イコニーク的解釈の試みと問題点  127
           (1)テュールマンの記号論的分析  127   
           (2)イムダールのイコニークの試み  131
      5  織り込まれた新ストア主義教訓:剛毅と節制の寓意  135
           (1)カイリンク、シュトゥンプフハウスの読解  135   
           (2) Nec adversis frangitur, nec prosperis aestuat. 137
      6  おわりに  140
   第四章 《アルカディアの牧人たち》(ルーヴル美術館蔵) ―「知恵」と「恒心」のテーマをめぐって  141
      1  《アルカディアの牧人たち》の概要と銘文解釈の問題  141
      2  女性像の表情と役割  149
      3  「知恵」と「運命」のトポスと「恒心」のテーマ  154
      4  おわりに  160

第V部 フロンドの乱の時代における恩寵、運命、知恵
   第五章 《エリエゼルとリベカ》 ―象徴的次元の前景化  165
      1  ローマへの帰還後のプッサン  165
           (1)第二の「七つの秘蹟」に見出される「適切さ」と新しさ  165   
           (2)パリにおける新しい顧客とプッサン  178
      2  《エリエゼルとリベカ》の概要と造形的特質  180
      3  排除されたラクダ  184
      4  素描からタブローヘ  190
      5  「悲劇」へのプロット化と象徴的次元の前景化  196
   第六章 「英雄的風景画」の成立と物語画 ―フロンドの乱への応答  198
      1  「英雄的風景画」の誕生  198
      2  フォキオン伝連作の概要  202
      3  「運命のいたずら」  205
      4  「真実は時の娘」 ―フォキオン伝連作における語りと寓意  209
      5  《ソロモンの審判》における知恵と正義の寓意  213
   第七章 《コリオラヌス》 ―戦争と平和の寓意  225
      1  はじめに  225
      2  図像学的考察と形態の着想源  228
      3  コリオラヌスの情念表現  233
      4  物語表現、意味構造の特質  238
      5  平和と戦争の「コンチェット」  243
      6  おわりに  246
   第八章 一六五〇年代の聖書物語画における語りと寓意  248
      1  《キリストと姦淫の女》―正義の寓意  248
           (1)はじめに  248   
           (2)作品の概要  248   
           (3)図像的伝統  250   
           (4)プッサンの特質  253
      2  《サフィラの死》―慈愛の寓意  257
           (1)作品の概要  257   
           (2)構図のプロトタイプ  263   
           (3)借用から創造へ  266
      3  《足萎えの男を癒す聖ペトロと聖ヨハネ》―信仰と救済の寓意  269
           (1)作品の概要  269   
           (2) 視覚的な着想源  271   
           (3) 構図の生成過程  274   
           (4)おわりに  279
   結論 プッサンの物語画の意味構造  281
      あとがき  287
      注  1
      文献目録  27
      人名索引  46


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