東アジアにおける言語復興
中国・台湾・沖縄を焦点に 

[編著者] パトリック・ハインリッヒ松尾慎

中国、台湾、沖縄などの危機言語へのフィールドワークから、記述研究と復興研究を総合的に捉え、研究者、スピーチ・コミュニティーが共同で行う、言語復興のための危機言語研究の新たな方向性と在り方を探る。

[書評]
『東方』359号(2011年1月、東方書店

定価=本体 3,000円+税
2010年8月31日/A5判並製/280頁/ISBN978-4-88303-259-4


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[目次]

はじめに  001

東アジアにおける言語危機とその研究(パトリック・ハインリッヒ+松尾慎)  003
  参考文献  014

中国における少数言語の活力の度合に関する予備的研究(孫宏開〔訳/藤田美佐〕)  017
  1. 序章  017
  2. なぜ危機言語は保護されるべきなのか  019
  3. 言語の活力の度合の基準  021
  4. 中国の少数民族言語の存続可能性の度合  023
  5. 議論の試み  026
  参考文献  029

意識をいかに変え、危機言語をいかに維持するか(デービット・ブラッドリー〔訳/藤田美佐〕)  ?031
  1. 言語危機における言語意識問題  032
     1.1. マクロな要因  032
     1.2. 言語境界の維持  034
     1.3. 言語使用領域(ドメイン)  036
     1.4. コミュニティ言語の継承は「コミュニティの成員が行うべきである」  038
  2. 危機言語に関係するコミュニティ  038
  3. コミュニティの問題に対する解決策  041
  4. 意識をいかに変えるか  042
  5. 言語だけが救われるべきものなのか  045
  参考文献  046

彝語の言語使用領域に関する予備的考察(Hu Suhua〔訳/松尾慎〕)  049
  1. はじめに  049
  2. イ語の民族的・言語的背景  050
  3. イ語の言語使用領域と言語使用の実態  051
     3.1. 「家庭」  052
     3.2. 「宗教」  054
     3.3. 「教育」  054
     3.4. 「法的手続き」  055
     3.5. 「メディア」  056
     3.6. 「言語景観」  057
  4. 言語使用領域を減少させつつある要因  058
     4.1. イ語の識字問題  058
     4.2. イ語の教科書と授業の不足  059
     4.3. イ語の危機に対する公的意識の不足  059
  5. 言語使用領域の活性化のための方略  060
  参考文献  062

台湾における言語編制の変遷──イデオロギーと効果(ヘニング・クレーター〔訳/藤田美佐〕)  ?063
  1. 序章  063
  2. 台湾の言語計画:過去と現在  066
  3. 強制された不平等から公平とはいえない平等へ  067
     3.1. 日本の植民地としての台湾、言語的階層の誕生  067
     3.2. 1945年以降:新体制となるが言語政策は旧態依然  068
     3.3. 抑圧から寛容へ  070
     3.4. 寛容から推進へ  071
  4. 言語計画と言語計画者  072
     4.1. 上からの言語計画  072
     4.2. 下からの言語計画  073
  5. 言語計画の欠陥  077
  結論  080
  参考文献  081

台湾における「郷土語言教育」の実態──台中市と新竹縣の公立小学校における調査より(松尾慎)  ?085
  1. 研究の背景と目的  085
     1.1. 台湾における出自言語別集団  085
     1.2. 台湾の言語政策的背景  087
     1.3. 研究の目的  088
  2. 郷土言語教育政策の概要  089
  3. 調査の概要  091
     3.1. 調査地  091
          3.1.1. 台中市/3.1.2. 新竹縣
     3.2. 調査方法及び調査項目  092
  4. 調査結果  094
     4.1. 郷土言語教育実施状況  094
          4.1.1. 授業の有無と開講形態
          4.1.2. 開講年度
          4.1.3. 必修であるか否か
          4.1.4. クラス分けの基準
          4.1.5. 教材
          4.1.6. 担当教師
          4.1.7. 評価
     4.2 郷土言語教育実施における問題点  102
          4.2.1. 授業効果
          4.2.2. 人材
          4.2.3. 教材(特に表記システム)
          4.2.4. 英語との競合/4.2.5. 変種の多さ
  5. まとめと今後の課題  107
  参考文献  109

琉球語の存続性と危機度──逆行的言語シフトは可能か(石原昌英)  111
  1. はじめに  111
  2. 琉球語の危機的状況と沖縄県民の言語意識  112
     2.1. 琉球新報による調査の分析  112
     2.2. 琉球語に関する調査の分析  115
     2.3. 琉球語の危機的状況はどの段階にあるのか  116
          2.3.1. Krauss (1992)とGrenoble & Whaley (2006)の基準
          2.3.2. ユネスコ危機言語保護プログラムに関する専門家部会の基準(言語継承と話者人口)/
          2.3.3. まとめ
     2.4. ユネスコ専門家部会の基準(言語領域、言語教材、言語政策等)でみた琉球語の現状  122
          2.4.1. 既存の言語使用領域
          2.4.2. 新しい言語使用領域とメディア
          2.4.3. 言語教育の教材とリテラシー
          2.4.4. 公的機関の言語意識
          2.4.5. 地域住民の言語意識
          2.4.6. 言語の記録保存
          2.4.7. まとめ
  3. 「しまくとぅばの日に関する条例」の制定  138
  4. 終わりに:提言に代えて  144
  参考文献  146

琉球列島における言語シフト(パトリック・ハインリッヒ)  151
  1. 社会言語学的な視点から見た琉球諸語  151
  2. 琉球列島における言語シフト  158
  結論  173
  参考文献  174

沖縄語講師の養成について(宮良信詳)  ?179
   1. 沖縄語の普及  179
  2. 沖縄語とは何か?  182
     2.1. 沖縄語か、沖縄方言か?  183
     2.2. 古い日本語と姉妹語関係にある沖縄語  184
          2.2.1. 語彙・音声レベル
          2.2.2. 語形成レベル
          2.2.3. 統語レベル
  3. 何を教えるか?  190
  4. 誰が教えるか?――沖縄語講師の養成と派遣  194
  5. どこでいつ教えるか――今後の課題  197
  2005年「しまくとぅばぬ日」宣言  199
  しまくとぅばの日に関する条例  200
  参考文献  200

『実践としての言語』の記録保存──うちなーの多言語社会再生へ向けて(杉田優子)  ?203
  1. はじめに  203
  2. 「実践としての言語」の記録保存  204
  3. 多言語社会としての琉球諸島  206
  4. 実践としての言語記録から見えてくる言語意識  209
     4.1 データと分析方法  210
     4.2 言語意識  211
     4.3. 他府県の人からみた「うちなーんちゅ」とその言語使用  215
  5. 実践としての言語記録から見えてくる言語選択:言語継承へ向けて  219
  6. まとめ  223
  データ  224
  参考文献  229

世代間言語継承を展望する──モデル構築と例証(バーナード・スポルスキー〔訳/藤原智栄美〕)  ?233
  1. 序論  233
  2. 家庭における言語政策  235
     2.1. 夫婦間での言語の選択  236
     2.2. 子どもに対する言語管理  238
          2.2.1. 言語の社会化
          2.2.2. 使用言語の決定
          2.2.3. 言語選択の複雑さとその理由
          2.2.4. 子どもの言語使用を導く要因:家庭内要因と家庭外要因
          2.2.5. 言語管理のストラテジー
  3. 言語継承:その信念とイデオロギー  250
  4. 結論  255
  参考文献  256

  本論文集で述べられる東アジアの言語名  261
  執筆者/訳者紹介  266


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