西洋美術研究
No.10 特集「展覧会と展示」

2004年1月31日発行
●本体2900円+税

2004年1月31日/A4判変型並製/200ページ/ISBN978-4-88303-126-9

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まえがき

中村俊春
芸術家―展覧会―公衆

 

論文

秋山聰
如何にしていとも気高き帝国の聖遺物が呈示されたのか
ニュルンベルクにおける帝国宝物の展観

1424年以来ニュルンベルクでは、神聖ローマ帝国の帝国宝物が保管され、年に一度一般に公開された。小論では、帝国宝物展観を聖遺物公開の脈絡において歴史的に概観すると共に、ニュルンベルクにおける展観行事の詳細を復元する。また聖遺物の現前が表象の受容に与えた影響について考察し、デューラーの版画販売戦略にも迫る。


吉田朋子
アンシャン・レジーム下の「サロン」

18世紀、パリの一大イベントとなった王立絵画・彫刻アカデミーの展覧会(通称「サロン」)。この名高い展覧会について、揺籃期から大革命までの歴史と開催の実態を、丹念に追跡する。「サロン」制度が確立し機能するまでにはいかなる試行錯誤があったのであろうか。さらに、アカデミー会員達は展示という行為に対して常に積極的であったわけではない、という事実も明らかになる。


圀府寺司
ファン・ゴッホ展覧会史
作品移動、市場、メディアから見た美術研究への序論

これまで芸術家の受容史はまず批評史として記述され、次いで映像作品の分析へと移行してきた。しかし、これらは受容の一面に過ぎず、特に初期受容においてほとんど決定的とも言える「作品の移動と開示度」の問題は、まだ十分に研究されていない。受容初期の作品移動やファン・ゴッホ展全史を展覧会市場などいくつかの観点から分析するとともに、最近の映像作品、サイバーメディアにもふれつつ、美術研究に新しい視点を導入する。


サンドラ・ペルスュイ
(飛嶋隆信/翻訳)
「20世紀の源泉」
西欧の学際的な近代芸術観序論

1960年11月4日からパリの国立近代美術館で開催された「20世紀の源泉」展は、1884年から1930年までの欧州各国における美術の傑作を、文学、建築、インテリア、写真、映画などと関連づけ、近代の意義を総括するかつてない試みだった。主催者ジャン・カスーが、一時代の精神を学際的視点で提示するべく、作品の貸与拒否などの苦境を乗り越え、後世の意欲的な企画の原点となる展覧会を実現させた経緯を追う。


尾崎信一郎
展覧会の政治学
ミニマル・アートをめぐる3つの展覧会

戦後美術において展覧会は状況の単なる反映ではなく、展示された作品の意味そのものを規定した。本論文では「プライマリー・ストラクチュアズ」、「アート・オブ・ザ・リアル」、「アンチ・イリュージョン」という1960年代後半に開かれた三つの重要な展覧会をとおして、ミニマル<CODE NUM=00A5>アートという特殊な表現がいかなる状況の中でアメリカ美術の正統性と優越性を確立することに貢献したかを検証する。

研究ノート

平川佳世
15、16世紀の南ネーデルラントにおける絵画市場の成立と作品展示


高橋健一
「第三の場」
17世紀イタリアにおける美術展覧会(展示)についての覚え書き


中村俊春
ジョン・シングルトン・コプリーと同時代的歴史画
マーケティング戦略としての展覧会


藤原貞朗
棲み分ける美術館・展覧会
1920-30年代パリの美術館展示にみるフランス美術の内と外

書評

千葉真智子
Tag Gronberg, Designs on Modernity: Exhibiting the City in 1920s Paris


鷲田めるろ
Mary Anne Staniszewsky, The Power of Display:
A History of Exhibition Installations at the Museum of Modern Art

展覧会評

松下真記
「ゴンザーガ家 神々しきギャラリー」展
(マントヴァ、2002年)


加治屋健司
「バーネット・ニューマン」展
(フィラデルフィア、2002年/ロンドン、2002年)


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